ボビーとトレイシーは若い夫婦。ふたりは子供を育てるのに最適な環境を求めて、郊外の一軒家に引っ越した。ここは『コモン』ていう自治組織が運営するコミュニティである。きれいな家ときもちのよい隣人たち、最高の教育を受けれるスクール。さぁあなたたちもいらっしゃーい。といわれて引っ越してきた。そこらじゅうが清潔で、町じゅうにマーサ・スチュワートであふれているといった風である。じつにウサンくさい！

格安の好条件を聞いたボビーはなんかへんだと思ったけど、トレイシーはひとめで気に入った。「わたし、ここに住みたいー。すてきー」と押し切られて契約した。トレイシーは善良な女性だけれども、洗脳されやすいタイプなのだなと思ったら、その通りに話が進んでいく。

ボビーの友達はこの町のことを皮肉を込めて「ヤッピーヘブン」と呼んだ。住人たちは偽善的な笑みを浮かべてそこらへんを歩き、目が合うと挨拶してくる。通販カタログの広告に出てくる清潔ファミリーみたい。トレイシーはますます気に入って、すてきだわーよかったわーとうれしそうである。ボビーは「かなわんな」と思いつつも、妻のためにこの空気に馴れようと努力するといういぢらしい夫ぶり。

やがてこの町の病的なぶぶんが露になってくる。一種独特の道徳律が支配する世界であるから、不貞などにはものすごく厳しい。浮気なんかが見つかった日にゃ町内会で裁判みたいなことをやる。罪の程度に応じて、財産没収とか広場でさらされて石をぶつけられる刑なんていうのを言い渡されるのだ。いっときますけど現代の話ですよ。ここは閉ざされた異世界。ルールに従わないと生きていけないのだ。

見かけが清潔でも、そこに住んでいれば恥部が見えてくる。契約の条件の中に「6ヶ月以内に子供をつくらないと家をとりあげられる」という条項が入ってたことにあとから気づかされた。町のルールに従えなかった女性が狂死する場面を目撃した。家の中に監視カメラがあると知った。ボビーはこりゃヤバいと思った。家族を人質にとられて囚人生活をしてるようなもんではないかと深く後悔し、いまこそファイトイッパツ！ここから逃げるのだと決心した。

トレイシーはここを気に入っていたけれど、目の前で女性の死を見たらば気が変わってボビーに同意した。この頃には彼女は妊娠していたので、ボビーは妻の安全を最優先に考え、彼女だけを先に逃がした。外の世界にいる友人夫婦の助けを借り、逃亡しようと企てたのだが、結局、失敗。最後になってトレイシーが寝返ったからである。

先に逃げたはずだった彼女が戻ってきて「わたしたちのためなのよ」と述べた。やっぱりモロに洗脳されちゃってたのである。ボビーは闘う意思をなくし、いわれるままにそこに棲みついた。息子が生まれた。きれいな家に住んで、きれいな奥さんとかわいい子供に囲まれる彼は憂鬱な顔つきでクルマ椅子生活をしている。彼は逃げられないように足をチョン切られちゃったのだ。新しい夫婦が見学にやってきた。期待に胸を膨らませる若い夫婦をアキラメ顔で眺めている。

書くのが最後になっちゃいましたが、ふたりの隣家には中年の夫婦が住んでいたんだけど、彼らは引っ越してきた初日から友達になったのだが、これのダンナっちゅうのが片足が義足で、どこか秘密を隠しているような雰囲気だった（ジョン・ビリングズリーがいい演技をした）。パーティでとつぜん夫婦ケンカをしだして妻にビンタをされ、その日からふさぎこんで外に出てこなくなった。エピソードの中では彼らの過去には触れられなかったけれど、きっと過去に彼はボビーがしたのと同じように逃亡を企て、挫折したのだろう、そして、片足を切られちゃったんだろうとドラマを見てるわたしたちは思うわけで、ボビーも同じ運命をたどることになっちゃったのでした。

洗脳されやすい女を妻にするとえらい目に遭うという教訓話。

よかったquotes↓

Tracy: How long have you guys lived here?
Philip: 12 years August. Worst 12 years of my life.
Philip's wife: Philip, stop it! they don't know you well enough yet.
Philip: Oh, come on, honey... they know I'm just kidding. I'm not kidding.