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デクスター/Dexter :: 2-03 :: An Inconvenient Lie :: ネタバレ

transデクスター/Dexter。シーズン2の3話。ネタバレ。
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SPOILER ALERT!!!
ネタバレです!!!

デクスターは前回リタに「ぼくは中毒者」告白をしたので、NA(Narcotics Anonymous = 麻薬中毒者を救済する匿名サークル)に行かなきゃならなくなった。これがまったく苦痛である。デクスターの場合、中毒は中毒でも殺人中毒なのでカミングアウトできるわけがない!「わたしはただただペインキラーがないといられなくなっちゃったんです」というオバサンの話を聞きながら「ぼくがほしいのはガムテと丈夫なゴミ袋と ... このまえナイフを研いだのはいつだっけ?」と考えたりする。あーつまんない!人々の話はぜんぶ同じなのだ。「やけになった→すべて失った→もうやめたい」のワンパターンばかりなので10分が10時間に思える辛さ。ドーナツもおいしくないし。だから途中で帰ることにした。リタの家に行った。リタが「どうだったどうだった?」とワーワーいうのでテキトーにごまかしていたらば「このうそつき」と怒られた。「だいじな用事があったから途中で抜けた」といったら「プログラムを放り出すのは許しませんから」とこわい顔である。

ここでデクスターの心の声のナレーション↓

How important are they? I'm sure someone with a heart could answer that question.

それがどれほどだいじですかって聞かれてもなぁ。心臓がある人間しか答えられないヨー。

と思いつつ「明日は行きます。今夜泊まっていいですか」と聞いたら許してもらえた。

翌朝。エレベーターでドークスに会った。「おはよう」といってみた。「昨夜は黄色信号でうまいこと逃げたな」とこわい顔でいうので「あ、昨夜も尾けてたの?」とトボけたら「今夜もな」といわれた。相変わらずの粘着デカぶりである。

エレベーターを降りたらたくさんの人たちでごったがえしているのでびっくりした。彼らはベイ・ハーバー・ブッチャーのニュースを見て警察に押しかけてきたのだ。行方不明になった家族の写真やDNA鑑定のためのものを持ってきて「うちの○○がいないか調べてくれ」という話である。この混乱時においてパスカルがいないのでみんなは不満に思う。指揮系統に問題が生じ始めている気配。死体はたくさんあって、顔がないものや骨だけというのも多いので身元を確認するだけで大変なのだ。ごったがえす人々の顔をみたデクスターは「彼らのほとんどは答えをもらえないだろう。こんなに愛されている人たちがぼくの犠牲になるわけがない」と考えるのであった↓

Most of these people won't find answers here. Chances are good. Their loved ones weren't among my chosen few.

FBIのランディ捜査官がタスクフォースに入る警察官の名を発表した。4名が選ばれ、エンジェルとデブラがその中にあった。ドークスはやっぱり入れず。デクスターは選ばれなかった。マスウカが鑑識のリーダーをやることになったので、彼はツルツルハゲにニコニコ顔である。ランディは「まずは死体の身元特定に全力で取り組もう。身元がわかればそこからパターンを推測できる。犯人逮捕の手がかりとなる」と述べた。彼はいかにも頭が良さそうである。

デクスターは「ハリィに教わったルールを守ってればぜったいだいじょうぶ」と自分に言い聞かせていて、ノーテンキにも次のハンティングの準備を始める。ちょ、ちょ、ちょっともう少しおとなしくしてた方がいいんじゃないかと私たちは思うわけだが、彼はaddictであるからして、ヤバいからヤメとくというオプションはないのだ。次の標的は中古車屋の販売員男で、彼は女性を連続してレイプ&殺した疑い濃厚。ロジャー・ヒックスという。犠牲者たちは彼が働く販売店を訪れたことがあって、そこで彼女たちはクルマを買わなかったが、クレジットカードの信用履歴をチェックしたヒックスが個人情報を調べて殺しちゃったんだろうというところまで調べた。ここまでは推測。あとはDNA鑑定をしてクロ判定が出たら殺しちゃえばいいのだ。

客のフリをしてクルマを見に行った。デクスターがミニバンを見ていたら、ヒックスが「子供は何人?」と話しかけてきた。「たくさん!」と答えたら「子供ができちゃったらオープンカーには乗れないよねー」なんて調子のフレンドリガイ。デクスターが興味を示したミニバンを勧めて「ファミリーにはこれがいちばんデス。じつはぼくもこれに乗ってる。DVDプレイヤーがいいよ。子供たちはスポンジボブに夢中。カミサンのオキニはこのカーナビ!」なんていうが、デクスターは相手が独身でバイクに乗ってることは調査済みだ。ウソ八百のインチキヤローであるが、販売員としては有能そうである。ウソつきだから殺すというわけにもいかないので、DNAをゲットしなくちゃ。彼の上着からコームを盗んだ。しめしめ。快調快調。

デクスターは証拠をもらいにいっただけのはずだったが、勧められたミニバンを買っちゃった。カーゴが広くて死体運びにちょうどいいと思ったからである。ラグエルタに「結婚するの?」といわれた。やっぱ世間はそう見るのだな。死体運びにちょうどいいからミニバンを買うという発想をするひとは少ないみたいだ。盗んだコームから得た髪の毛はカツラであった。ちぇ。と思ったら、デクスターは「髪の毛はニセだったけどずいぶんいろんなことがわかったぞ」なんて思っている。

マスウカがきた。彼はおおいばりで「おれと父と呼んでもいいぞ」という。なんで彼がいばっているかというと、ベイ・ハーバー・ブッチャーの鑑識リーダーに選ばれたからなのだ。「デクスターをいちばんの子分にしてあげるね」という。仕事を手伝えということなのだ。DNA鑑定を手伝えといわれた。「テントにこいよ!」という口調は新しいオモチャをもらえた子供のようである。なにがそんなにうれしいのか。テントってナニ?

Masuuka: Who's your daddy?
Dexter: Uh... Harry Morgan.
Masuuka: Dude, the lead forensics investigator of the joint task force. That's who.
Dexter: Oh, okay.
Masuuka: So, you want in on this bitch or not?
Dexter: What bitch?
Masuuka: The only bitch in town, baby. The bay harbor butcher. I got you temporarily assigned.
Dexter: Vince, you didn't have to do that.
Masuuka: Nothing sexy, of course. Just some bone-Marrow collection for DNA I.Ds. But it'll get you in the tent. And you got to see the tent. Amazing.

マスウカに連れられて外に出てきてテントの意味がわかった。FBIはベイ・ハーバー・ブッチャーの被害者遺体の保管所として特設テントをつくったのである。テントといってもかなりデカイ。日本風にいうと工事現場のプレハブってかんじか。かなり大きくて、死体が腐らないための空調設備もある。戦場の死体置き場のようでもある。

Masuuka: The pressure's fucking ridonkulous.
Dexter: Glad to be of service.
Masuuka: Field morgue for the overflow. But it's state-Of-The-Art. Fucking FBI, huh?

"ridonkulous" って "ridiculous" の強調形スラングです。彼はベイ・ハーバー・ブッチャーの鑑識仕事をやることになったので「このプレッシャーはすさまじい」といってるのですね。これに対して、デクスターの "Glad to be of service.(よろこんで手伝うわ)" という返答はなんともスィートで、このふたりがしゃべってると漫才コンビみたいデス。

テントに入ると死体がズラリ。オブジェのようである。デクスターはこの光景を見て戦慄した↓

They weren't meant to be put together again. They were meant to remain in the silent shadows, Keeping their secrets. Now they're exposed to the glare, reflecting my darkness like some grotesque carnival mirror. Harry was right. Nothing stays buried. Perhaps not even me ...

このバラバラ死体たちは日の目を浴びることなく秘密裏に沈んでいるはずだったのに。いまとなっては彼らは白日の元にさらされて、ぼくの心の闇を反射している。まるでグロテスクなカーニバルのミラーみたいだ。ハリィは正しかった。すべてを隠しておくことはできないんだ。もしかしてこのぼくさえも ... 。

夜。ドークスは今夜もまた駐車場でデクスターを待ち伏せしていたが、彼はデクスターのクルマがバンに変わったことを知らないので尾行に失敗した。デクスターは退屈なNAに再びやってきた。NAに来たという証しのチップ(ラジオ体操のスタンプみたいなものか)をもらうためだけに来たのだが「なにかしゃべって」といわれたんで「ぼくはボブです。ヘロインのせいで死にかけた」とウソの話をした。終わってからまずそうなドーナツに手を伸ばしたら、謎の女に声をかけられた。誘われるままにお茶した。このシーンの会話はものすごくミステリアスで、デクスターはズバリと本心を当てられてびっくりする。ただの精神分析好きな女性か、あるいはすべてを知っていて意図的に接近したのかどちらともいえない。とてもよいquotesなので全文引用しよう↓

Girl: So, tell me... Exactly how full of shit are you?
Dexter: I'm not full of anything.
Girl: It was a nice performance in there. Where did you download it from? Addict.Com?
Dexter: I have no reason to lie.
Girl: Sure you do. We all do.
Dexter: You thought I was lying?
Girl: I don't know. Bob.
Dexter: Well, it is anonymous.
Girl: Everyone in that room has heard or lived far worse than anything you've ever done.
Dexter: I doubt it.
Girl: Oh, so you're super-Junkie.
Dexter: I don't mean to imply that what you've been through hasn't been difficult.
Girl: But there's no way that I could know what you've experienced, right? I couldn't possibly feel that need like a thousand hiding voices whispering, "This is who you are." And you fight the pressure. The growing need rising like a wave, prickling and teasing and prodding to be fed. But the whispering gets louder. Until it's screaming, "now!" And it's the only voice you hear... the only voice you want to hear. And you belong to it, to this... shadow self. To this...
Dexter: Dark passenger.
Girl: Yes. The dark passenger.

訳してみた↓

Girl: 教えてちょうだい。あなたの中にはどんなヤバいもんが詰まっているの?
Dexter: ぼくはからっぽです。
Girl: あのスピーチはよかった。どっかのウェブサイトからダウンロードした?addict.com?
Dexter: ウソなんかじゃないですよ。
Girl: わたしたちはみんなうそをつく。
Dexter: ぼくがウソつきだと?
Girl: さぁね、ボブ?
Dexter: あれは匿名サークルだから。
Girl: あのサークルを訪れるひとたちはそりゃもうひどい経験をしたひとたちばかりだ。あなたにはわからないかもだけど。
Dexter: そうかな?
Girl: おぉー。んじゃあなたはスーパージャンキーってわけだ(皮肉)!
Dexter: あなたが人生をノホホンと生きてきたといってるわけではないです。
Girl: あなたが経験したことを知る術はわたしにはないけれど ... あなたはその胸の中に「これが本当のぼくなんだ」と叫びたがってる自分自身を閉じ込めているでしょ。あなたの心の中では何千人もの囁き声がこだましている。あなたはその声を相手に闘っている。それはしょっちゅう大波のようにあなたの胸に満ちてきて「エサをくれ」と渇望を訴える。それは痛みであり、苦しみだ。その声はだんだん悲鳴になってくる。「はやくはやく!」と高まってきて、あなたはそこでやっと気づくんだ。あなた自身その声を聞きたかったということに。それは敵なんかではなく、あなたの友達だ。影の友達。影の自分。すなわちそれは ....
Dexter: ダーク・パッセンジャー?
Girl: そう。それはあなたのダーク・パッセンジャー。

ダーク・パッセンジャー = dark passenger = 闇の乗客

『ダーク・パッセンジャー』という言葉はデクスターの胸にズシリと響いた。怖くなって彼女の前から逃げだした。NAの人間は心の闇を知っている。だから危険だ!ぼくはNAにはもう行かれない。リタにわかってもらわなくちゃ。彼女に話してみた。「NAサークルはぼくには合わない。ぼくはひとりでヤクを絶つことができると思う」とお願いしてみたけどやっぱりだめである。リタは死んだ元夫のポールが何度もヤクで失敗したのを見てるから、この点において妥協はできないのだ。彼女は悲しみをたたえた表情となり「あなたの気が変わることを祈っています」と静かに拒絶した。この夜は泊めてもらえなかったので、家に帰ってデブラといっしょにテレビを見た。

翌朝。殺人販売員のところにいった。デクスターはこのまえバンを買ったので相手はほくほくである。保険がどーのこーのといってオフィスに入り、こっそりタバコの吸い殻をゲットした。ここでひとりの女性に出会った。ブルネット美人で独身でひとり暮らし。彼女は破格値でクルマが買えたといって大喜びであり、ヒックスのことを「なんていいひとだろう」なんていっている。彼女はおそらく次の標的であろう。

タバコの吸い殻を調べたら、殺人事件の現場から採取された精液と完全マッチ。てことは早くしないとあの女性が殺されちゃう!と思ったらいてもたってもいられない。これはデクスターの良心なのか、それともNAの女がいってたダークパッセンジャーなのか。自分の闇と戦うデクスターはリタにコールした。彼女の声を聞いて落ち着きたかったのだろう。「えーと今日はピザナイトなんで、いつものように持ってくね」といってみた。「NAに行くの?」と聞かれたんで「それは考えちゅうです」と答えたら「ピザナイトはわたしらだけでやりますわ。今後のことはアナタ次第です」と冷たいお言葉。ガチャンである。デクスターはものすごく落胆した。

ところで、デブラはベイ・ハーバー・ブッチャーのタスクフォース入りを命じられたので、警察署にやってきた人々の話を聞くという仕事をずっとやっている。愛する家族が行方不明になったと悲しむ者たちの叫びを聞いていたら、ルディのことを思いだしてやりきれなくなった。彼女は限界を感じ、ランディに「タスクフォースからおりたい」と直訴した。ランディは「代わりを見つけるまで待ってね」と受け入れたように見えたが、それはデブラに考える時間を与えるためだったようである。

タスクフォースは出世のチャンスなのでだれもが入りたがる。だからデブラはスグに後任が見つかるだろうと思ったのだが、いつまでたっても代わりがやってこないので「まだですか!」と文句をいいにいった。ランディは意見した。「シリアルキラーに拉致された女性だからこそ君を選んだ。君が経験した苦しみはわたしには想像もつかないけど、君はキラーの心に触れて、生き残った人間である。それを受け入れたらどうか。そしたら君は強くなれる。アイストラックキラーよりももっとひどいキラーを捕まえることができるかもしれない」という口調は仕事を強制するようではなく、先輩のまろやかなアドバイスといった調子である。女性部下の扱いがウマい!

ランディはキリリとした顔つきの、いかにもFBIの辣腕捜査官という風体だが、こういうときに「人々を救え」とか「君が必要だ」なんていう言い方をしないのがよい。最後の "But you have to stop running." はどういう意味でいったのだろうか。デブラがジムに通ってることを知ってるのか。あるいは比喩的に「立ち止まって考えてみ」というアドバイス?

マスウカはお疲れモードである。「ぼくにも生活ってもんがあるのに!」と聞いたデクスターが「ほんとに?」と答えたりする。なんかおもしろい。マスウカはDNA鑑定の結果を聞いて落胆し「帰るときにテントモルグにこれを届けてくれ」とデクスターにお使いを頼んだ。彼は残業で帰れないのだ。「ベイ・ハーバー・ブッチャーのせいでぼくのネット生活はめちゃめちゃだよ」とブツブツ文句をいって仕事に戻る彼の背中にデクスターは「ゴメンよ」とつぶやいた↓

Masuuka: Lead fucking investigator. Translation. Everyone's bitch. I do have a life, you know.
Dexter: You do?
Masuuka: Just give me your bone-Marrow dna results.
Dexter: No matches.
Masuuka: Big surprise. Do me a favor on your way out, will you? Drop these dental x-Rays at the field morgue for me? Tech should still be there. Fucking bay harbor butcher is butchering my online social life.
Dexter: Sorry.

一方、ラグエルタも残業していたが、そこにマシューズがきた。彼の用件はパスカルに関してであった。パスカルはこの忙しいときに役立たずであり、それは私的なゴタゴタに気をとられているせいである。ラグエルタはパスカルをカバーしてやっていたが、署内に噂が広まり、マシューズもパスカルの異変に気づいたようだ。パスカルがボスにあるまじき行動(erratic)をしているという噂を聞いて、ラグエルタに意見を求めた。「アイツはだめじゃないか?おまえがイエスといえば、もういちど以前の地位に戻してやる」というが、ラグエルタはこれを拒絶した。「『移り気な行動(erratic)』の意味を知っているか?それは男たちが女を見下すときの台詞である。わたしゃ以前のポストでいやっちゅうほどそれに耐えた。キャプテン、噂なんか信じるのはおやめなさい。パスカルはだいじょうぶでしょ」とカッコよく相手の提案をケトばした↓

Matthews: Should I be worried about Pascal?
Laguerta: Pascal? Why?
Matthews: You can cut the crap, Maria. I know she's been awol on personal matters. The press fuckup is huge, And now I'm beginning to hear rumors about erratic behavior.
Laguerta: And you're asking me because...
Matthews: Because you've done the job. So if she's out, that means you're back in. That makes you her harshest critic, and I want it straight.
Laguerta: So...
Matthews: Take your shot, Maria.
Laguerta: Hmm. You know what "erratic" means? It's code for "non-Male". And it's the same bullshit sexism I put up with when I was in charge. I won't dignify rumors, captain. Pascal's fine.

AWOL -> Absent (or Away) Without Leave

デクスターはマスウカにお使いを頼まれたんで、外に出てテントに行こうとしたら暗闇でドークスが現れた。ぶっとい腕を組んでこわい顔で睨みつつ「バンでおれをダマしたと思ってやがるな」とネチネチ。「たまには休んだほうがいいよ」といったら「ピザナイトにか?それはありえんね。なにがあったのかおまえのガールフレンドに聞いてみようかな」とギロリ。電話を盗み聞きしたのか。「そもそもぼくがなにをしたっていうのだ?」と聞いてみた。「おまえはアイストラックキラーのことでなにか隠しているだろ」とズバリ。さらにデクスターに関して調べたことをしゃべった。「おまえはものすごく用心深いな。貯金を現金で溜め込んでる。なんのコミュニティにも属していない。おまえはトップ成績の医学生だったのに血痕専門家の道を選んだ。おまえはカレッジでマーシャルアーツを習った。ラボで働くおまえがなぜ格闘技を習う必要があった?」と矢継ぎ早の尋問を投げてくるのは、ドークス流の追い込み戦術だろう。デクスターは「クレジットカードをイージーに使いたくないだけだよ」とひとつの疑問にだけ答えて立ち去ろうとした。その背中に「おまえはうそつきだ」と浴びせられた。デクスターは「ウソがそれほどじょうずならこんな苦労はしないさ」と思った。

テントモルグにきた。中は暗くひんやりとして、たくさんの死体が置かれている。戦場の死体袋のようだが、ぜんぶデクスターの手による犠牲者である。ドークスのいったことを頭の中でおさらいしてみた。

Sergeant Doakes thinks he knows my secrets. But he only needs to look at this, my body of work, to know the real me.

ドークスは必死でぼくの秘密を探ろうとしている。でもそれを知りたいならこれを見るだけで十分なのにな。本当のぼくを知るにはこれを見なくちゃ。

だれもいないモルグでひっそりと見守っていたら奥から声がした。ランディだった。彼はひとりで死体を眺めて思索にふけっていたのだ。デクスターが意見を求めると、彼は「正しい質問をすれば死体は必ず答えをくれる」と答えた。「パターンを探っているのですね」「これだけの人数をこれだけ注意深く殺すんだからなにか理由があるはずだ。規律みたいなものかな。歴史に残る最悪のキラーたちの共通点を知っているか。それは彼らが『そうするべきだ』と信じて殺しをやっていたという点である。大虐殺を行った暴君しかり」「でもどんな理由があったにせよ殺人を正当化できないでしょう?」「そうだ。でもそれが無実なひとたちを助けるためだったとしたら?」という最後の台詞でデクスターはギクリとした。そしてこう思った。

「人助けのためにやってるというわけでもないんだな。結果的にそうなってるわけだけどもさ。ランディはハリィと似てるかもしれないな」

と心の中でつぶやきつつ、さーていくかとハンティングに向かった。相手はもちろんクルマの販売員の顔をした殺人鬼。出かける前にドークスのクルマをパンクさせてやった(大胆)。

ヒックスを暗闇で拘束。「妻なんかいないよね。子供の話もウソだよね」と声をかけてチョーク攻撃。気絶した男をバンの後ろに積んだ。彼が勧めてくれた通りに使いやすいカーゴである。いいクルマを勧めてくれてありがとう。

いつものようにサランラップでグルグル巻きにしてやった。殺人者が罪を犯した場所で懺悔をさせつつ惨殺するのがデクスター流である。いつもはここで犠牲者たちは「おねがいヤメテ!」と罪を認めるのだが、今回のヒックスはしぶとい!やがて目を覚ました彼はシラを切り続ける。デクスターは彼の身辺をすべて調べてあるので、その言葉がすべてウソだと知っている。ひとつひとつウソだと答えてやった。そして自分は結婚をしていないし、子供もいないのだと教えてやった。と聞いたヒックスは「でも恋人がいるんだろ?クルマを買いにきたときひとめでわかった。あなたくらいの年頃の男性は派手なクルマに乗りたがるものなのに、あなたはあのバンに興味を持った。助手席に座る彼女を夢見ていたんだろう?」と口が達者である。デクスターは「彼女っていうか、ただの遊び相手だよ ... のはずだったのだが」なんて調子でヒックスに心情を告白してしまう。デクスターの心の揺れを見抜いたヒックスは「あ、女とうまくいってないんだな?女はみんなビッチだ。ビッチどもはなんにもわかってない!価値ゼロだ!カントのメスブタ!」とわめきだした。デクスターはズブリと相手のおなかにナイフを刺した。「ぼくの彼女をそんなふうにいうなよ」

ヒックスを殺した後、NAにやってきたデクスターは壇上に登り、みんなの前で心の闇を告白した。今回は偽名じゃなく本名を名乗り、かなり正直に話した。今回のエピで目玉シーンだ。とてもよい演技である。全文引用しよう↓

I'm dexter and I'm not sure what I am. I just know there's something dark in me and I hide it. I certainly don't talk about it. But it's there ... always. This dark passenger. And when he's driving, I feel... alive... half sick with the thrill of complete wrongness. I don't fight him. I don't want to. He's all I've got. Nothing else could love me. Not even... especially not me. Or is that just a lie the dark passenger tells me? Because lately there are these moments when I feel ... connected to something else. Someone. It's like ... the mask is slipping ... and things ...people ... who never mattered before are suddenly starting to matter. It scares the hell out of me.

訳してみた↓

ぼくはデクスター。ぼくは自分がナニモノだかわからない。ぼくの中にはだれかが潜んでいる。それについては口が裂けてもいえない。ただいえるのは、その『ダークパッセンジャー』に導かれたときの高揚感は何物にも代えがたく、その瞬間のためだけにぼくは生きてるんだってことだ。ぼくは気が狂っているのかもしれない。ぼくは彼をやっつけようとは思わない。彼はぼくのすべてなのだから。彼だけがぼくを愛してくれるのだから。彼はぼく以上にこのぼくを愛しているんだ。でもさいきんは疑問を感じるときがある。さいきんぼくは彼以外のなにかとのつながりを意識するようになった。それはなんだかマスクを剥がされるみたいで、ものすごくおそろしい。いままで無意味だと思っていたひとたちが急に大きな意味を持つようになってきた。それがとてもとてもこわいんだ。

このスピーチは感動的であり、その場にいた者たちはジャンキーの告白として胸の中におさめた。そして拍手をした。『ダークパッセンジャー』を教えてくれた女性の名前がライラ(Lila)と明かされた。ライラは「ハロー、デクスター」と挨拶した。スピーチを終えてみんなの拍手を浴びてふぅと一息ついたら、なんとそこにドークスが立っていた。ギョギョギョ!ヤバい!ドークスは犯罪現場を押さえた刑事の顔つきであり、次のように述べた↓

I knew there was something wrong with you. The secrets, the sneaking around. Now it all makes sense. A lot of cops have been where you are. The booze, the drugs ... makes the job go down easier. Stay clean and stay out of my way. We won't have a problem. Oh, you owe me a new Michelin, you motherfucker.

そういうことだったか。大勢の警官が酒やドラッグで人生を台無しにした。おまえもそのパターンだったか。せいぜい身の回りを清潔にしておれ。おれの目の前をウロチョロするな。もうおまえには関わらん。おっと、ミシュランの新品は貸しにしといてやるわ、この変態め。

てわけで、ドークスはデクスターの不審行動をすべてドラッグのせいだと信じて去った。ウハ。いやいや行きはじめたNAだったけれど、ドークスに見られたときは心臓が止まるかと思ったけれど、なんとこれのお陰でドークスの追尾から逃げられるというBIGな幸運。デクスターは大喜び。ニコニコ顔でリタの家に直行。寝ていた彼女を起こして「君が正しかった!NAにいってほんとによかった。ありがとう」といったので、完全に仲直りできた。ヤッター。

一方、こちらはデブラ。彼女は遅くまで残ってインタビューを続けている。「おれのアニキが死んでるかどうかだけ教えてくれりゃいい。母親も姉妹も安心させてやりたいのさ」という男の話を聞いて彼女はピンときた。「もしかして被害者たちは犯罪者?」と直感したデブラはランディに話してみた。ランディは「おもしろい。さっそく犯罪歴者のDNAと照合してみろ」と褒め「はやく仕事に戻れ」と激励した。デブラはヤルキになったようである。ランディはデブラに指摘される前にその可能性に気づいていたはずなんだが、いかにも「おぉその考えはおもしろいねー」とヤルキにさせるようなことをいうのでナイスな上司ぶりである。メモメモってかんじです。

翌朝。デクスターは新しいミニバンでリタとドライブ。ふたりは仲直りをしたのでとってもラブリーな空気である。彼女を乗せてNAの場所に来た。目的地に着くと彼女に運転席を譲った。リタがニコニコ顔で「1時間で迎えにくるわ」と去ろうとしたところで、デクスターはライラを見つけて指差した。「あ、あれがぼくのスポンサー(世話役)だよ」といわれたリタがそっちを見ると、ミニスカのスレンダー美人の姿がリタの脳を直撃。がっびーんと絶句した。な、な、なによあのオンナ!青筋ピクピクの瞬間沸騰。カルシウム食え!みたいな。デクスターは彼女の逆鱗にまるで気づいてないようすで「んじゃあとでねー」と立ち去り、彼はライラに出迎えられ、ふたりはニコニコと建物に消えていった。リタのち、ち、ちっきしょう顔を残してまた来週〜。

※感想

ラストのジュリー・ベンツの演技、サイコー。彼女のベタベタベッタンコの演技はほんとにスゴイですね。ジュリーさまは撮影では何度のテイクでオッケーもらえるんだろう。イッパツであれができるのかな。モニタで自分の演技を見直して「もういっぺんやらせて!」とかいってそうな気がします。

このエピの見どころは新キャラのライラとデクスターがカフェで話すシーンと、最後のデクスターのスピーチだったと思う。ライラはイイですねー。いったいどういうつながりなんだか想像もつかないけれど、もしかして彼女はぜんぶ知ってて、第二のルディ?かどうかどうはわかりませんが、とても演技がじょうずで、雰囲気があって、言葉に迫力があります。彼女には引き込まれるような重力場がある。

ナイスなquoteには私なりに訳文をつけてみたのですがむずかしいです。日本語というのは『目で読む言語』、つまり字面で雰囲気を表現する言語だと思うんですが、英語というのはリズム感でグッとくる言語であって、ここらへんが決定的に違うと思います。良いquotesを良い演技でヤラレちゃうと、耳で聞いてその音が記号になって脳に流れくるこんでくるような感動を覚えます。リズムがすごくいいの!

エピガイが遅れているのですが、この次もなるべくはやくアプしたいと思っています。

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ジュリmama (2007.11.06 03:01)

いつも楽しく拝見させて頂いています。デクスター シーズン1終わってしまったので :shock: その後がすごく気になっていたので こんな感じかな :roll: ?と頭に浮かべつつ読んでいます これからも楽しみにしています :P

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